BPQC

01 MAR 2017

BPQC暮らしの中にある、私のスタンダード

春の訪れを告げる朝の光の中、使い馴染んだカメラをそっと構えるモデルのKIKIさん。
山や旅を楽しみ、そして同時に、何気ない日常のワンシーンも大切にする暮らし。
澄んだ笑顔の彼女に、自分らしくあるためのスタンダードを尋ねてみた。

日常がくれる贅沢な時間

その一瞬だけではない、時間の経過が育んだもの。

KIKIさんが日々の暮らしで愛しむ一つひとつには、美しい時の物語が綴られている。
「湘南に住み始めてもう8年くらい。毎日の生活はゆっくりとしたペースに変わりました。東京みたいに便利ではないから、最初は料理とかも止むを得ず、といった感じだったんです。でも、新鮮な野菜が並ぶ市場があったり、魚も地のものが手に入ったり。対面で買うので直に調理の仕方を教えてもらって。そうするうちに、家でご飯をすることも多くなりました」。

山や海の自然に囲まれて、足を運びたくなるお店もここかしこに点在、その先には歴史あるお寺や神社がある風景。「いろんな距離感が心地のいい場所なんです。東京なら、ちょっとした空き時間に映画や展覧会に行くとか、友人の集まりに顔を出すとかできますよね。生まれも育ちも東京なので、そういうのも嫌いじゃないんです。でも、何をするにも離れているので、“なんとなく”ではなく“絶対に見たい”とか“会いたい”、そういう気持ちが大切になる。それでいて、今日は夕焼けが綺麗そうだから『ちょっと海まで行こうか』と夫と2人、自転車で出かけたり、天気がいい日には山でトレランして、土の上を走る感覚を楽しんでみたり。奥深い自然を、すぐ身近に感じられる環境ですね」。それは日々の些細な変化に宿る、幸せで“濃密な時間”。

時が伝えてくれること

彼女の写真にも、時が紡ぐ物語は静かに刻まれている。

「フィルムで撮影すると現像して、プリントを目にするまでのタイムラグがあるので、絵になってあれ? って思うことがあるんです。あ、私はこの光が綺麗と思ってシャッターを切ったんだなと気付いたり、その瞬間は見過ごしていたものが後から現われたりする。そこに時間が封じ込められている気がして、より深く楽しめるんです」。

建築に造詣の深いKIKIさんには、時の経過を自分なりに表現してみたいという願望もあるそうだ。好きなのは教会建築。「人が集う場所だから、空気感や、人々が何を大事にしてきたのか、その街の教会を訪れるだけで歴史を体感することができる。それは時間の積み重ねで少しずつ形作られたものだけど、人の手で演出するならどうすればいいのか? 私のなかに“表現してみたい欲”があるんですよね(笑)。ちょうど夏前に引っ越しをする予定で、今空間について考えているんです。わざと古くしたりはしたくないから、新しいのか古いのかわからない、そんな雰囲気が作れたらいいなと思っています」。

いつの日か物語を

意外なような気もするが、「同じことを繰り返すのは得意じゃないんです」とKIKIさん。彼女らしくあるためのスタンダードはむしろ「窮屈にならないよう、決まりごとは作りすぎない」こと。ファッションでも、単純に自分の好みを優先するより、シチュエーションに馴染む装いを考えるという。「山に立つ姿を想像して、その背景に合わせたアイテムにしたり、海辺の街を訪れるならボーダーでマリンにしてみようとか。だから、選ぶ服の幅はすごく広くって、物が溢れて困っちゃう(笑)」。一つの色に染まらず、いろんな自分でありたいという気持ち。それが、彼女の魅力をいっそう深くしているのかもしれない。
長く愛用しているのは、一年を通して欠かせず、こちらも「どんどん増えてしまう」と笑うストールの数々。それにもう一つ、母や祖母から譲り受けたものたちだ。「持っていた当時のエピソードを聞いたりすると、余計に大切にしたいなと思いますよね。私も年を重ねるごとに、長く使える、良いものを手にしたいと感じるようになりました。使い込むことで物語が生まれるような、愛着を持てるもの。いつの日か、それを譲り渡せる日がくるといいですね」。

  • photographs : Hideyuki Seta
  • styling : Setsuko Todoroki
  • hair & make-up : Tomoko Okada(TRON)
  • model : KIKI(Now Fashion Agency)
  • text : Aiko Ishii
  • edit : FASHION HEADLINE
  • special thanks : トキオプラージュ・ルナティック/tel 03-3708-1118

記事提供元 FASHION HEADLINE

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