BPQC

06 DEC 2017

BPQC暮らしの中にある、私のスタンダード

吉祥寺の街の喧騒から離れた閑静なエリアで、作品展示を行う〈ギャラリーフェブ〉とパン屋〈ダンディゾン〉を営む、
引田ターセンさん、かおりさん夫妻。彼らが手がける風通しの良い空間には自然と人が集まる。
心地よく働き、暮らすために大切にしていることを聞いた。

PHOTOGRAPHS:AKIKO BABA
TEXT:MARIKO URAMOTO

自分のものさしで心地いいものを選び、
日々、小さな幸せを重ねていく。

 引田ターセンさん、かおりさん夫妻が、吉祥寺の静かな場所でギャラリーとパン屋を開いたのは2003年のこと。それまで、ターセンさんは大手外資系企業に勤めるビジネスマン。かおりさんは専業主婦だった。「僕は定年を迎える前に早期退職しようと決めていたんです。仕事はおもしろかったけど、規模が大きくなりすぎて、自分が人の役に立っているのか実感がわかなくなった」とターセンさん。しかも、平日は忙しく、家族と一緒にいられるのは週末だけ。「そういう暮らしはもういいかなと感じてしまって。これからの人生は、人の喜ぶ顔が直接見える仕事をしたい。そう思ったんです 」と振り返る。突然の会社員卒業宣言に驚きつつも、かおりさんは大賛成。それなら、人を幸せにできる場所を作ろうと、1棟のビルを建て、そこにとびきりおしゃれな空間で、自分たちが心から勧めたい作品を扱うギャラリーと、おいしいパンが並ぶ店を開きたいと考えた。ギャラリー運営もパン作りの経験もなかったが、二人の思いに賛同する人たちが集まって手を差し伸べてくれた。厳選した素材で作ったおいしいパンと、丁寧な接客が評判を呼び、オープンから間も無く〈ダンディゾン〉は行列ができる人気店に。「パンを買いにきた人がギャラリーに立ち寄ることもあるし、その逆もある。行き来があって楽しいですよ」とターセンさん。

 ギャラリーの企画はかおりさんが決めている。「初めて、ガラス作家のイイノナホさんの作品を見た時、温かくて幸せな気持ちになったんです。彼女が手がけるような、日々の暮らしを豊かに彩るものとの出会いの場にしたいと思いました」と、かおりさん。そのためには自分で買い、実際に使って、いいと思ったものだけを選んで紹介する。「私は“迷ったら買う”派。買わずに、良し悪しは判断できないから」。もし、自分に合わないと感じたら、潔く人に譲る。すごく気に入ったものでも、他の人が気に入ってくれたらプレゼントすることもあると言う。それを聞いたターセンさんは「彼女はね、昔からこういう人なの。初めは変わった人だなぁと思ったけど、ものに執着しないスタンスはすごく尊敬します」と微笑む。二人は「美しいものを愛でるのは好きだけど、コレクターではないから」と口を揃える。気に入ったものは大切に使い、欲しい人がいれば、喜んで手放す。すると、いい循環ができるのだという。二人は昔からそうやって、清々しい空気が流れる暮らしを大切にしてきた。ギャラリーの隣の部屋には、北欧家具が並ぶオフィスがある。ここにも心地よい気が満ちている。「展示期間中、作家はほぼ毎日来ますよ。気持ちがいいから、って」とターセンさん。

 かおりさんは服選びにも思うことがある。「私と同世代の人の中には『派手な色はちょっと……』とか『流行りの服は似合わないから』って、苦手意識を持つ人もいます。でも、実際に着てみると案外似合うことが多い。だから、自分で決め付けないこと。こういう明るい色のセーターやトレンドのアイテムを取り入れるだけでも、楽しい気分になりますよね」。ターセンさんも頷きながら、「男性も明るい色の服をもっと着るといいよね。おしゃれなおじさんが増えたら、街も活気付くと思うよ」と続ける。お互いの服を見て、「いいね」と褒め合う姿はそばで見ていてとても気持ちがいい。二人の間にもまた、いい空気が流れている。

 心地いい生活を送るためには「自分を知ることが大切」という二人。そのためには、自分にとって気持ちのいいことは何かを考える。「気持ちいいと思えるものを選ぶと、使うたびに嬉しくなるし、見ているだけでも心が満たされる。すると、日常に小さな幸せが増えていく。たくさんのものを持つことが豊かさではなく、少なくても心地のいいものがあればそれで充分だと気づくんです」と、かおりさん。
〈ギャラリーフェブ〉に並ぶ作品も、〈ダンディゾン〉のパンにも共通しているのは、ここを訪れる人を幸せにしたいという思いが込められていること。手にした時にしみじみ「素敵だなぁ」と思えるものや、口にしたときに「あぁ、おいしい」と感じるものは、日々の豊かさにつながる。そんな小さな感動を与えてくれる、二人の思いが形になった場所。ここにどうしてたくさんの人が集まるのか、訪れた人はきっとその理由がわかるだろう。

引田かおり、ターセン ギャラリー、パン屋 オーナー

自然体でシンプルな暮らし方、生き方は、さまざまなTVや雑誌で取り上げられ、多くの注目を集める。共著に『しあわせな二人』『二人のおうち』(共にKADOKAWA)など。日々のことを綴るブログ「ターセンの光年記」も人気。 www.hikita-feve.com/diary
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