BPQC

25 APR 2018

BPQC暮らしの中にある、私のスタンダード

幅広い分野で活躍するブランディングディレクターの福田春美さん。
さまざまなジャンルで才能を発揮するために大切にしていること、仕事との向き合い方について聞いた。

PHOTOGRAPHS:AKIKO BABA TEXT:MARIKO URAMOTO
SPECIAL THANKS:TOKYO GARDEN

人に寄り添うことで見つけた
暮らしの中の小さな幸せ。

 アパレルの世界を出発点に、生活にまつわるプロダクトやライフスタイルショップのプロデュース、広告ディレクションに至るまで多岐に渡って活躍する福田春美さん。閑静な住宅街にある自宅兼仕事場は、彼女の審美眼に適ったアイテムがさりげなく散りばめられていて、気負いがなく居心地がいい。築35年ほどの低層マンションは、自由に改装できるところがお気に入りだという。「キッチンの壁に白いタイルを貼って、食器を並べられる棚を作り、板とパイプを組み合わせて収納スペースにして、必要なときにものがすぐ取り出せるようにしました。基本的に“見せる収納”なので、心地のいい色合いの食器やキッチンツールでまとめるようにしています。皿やグラスがどこにあるのか一目瞭然なので、遊びに来た友人たちも自由に取り出して寛いでいますね」。料理が得意な福田さんはもてなし上手としても有名で、仕事仲間や古くからの友人が彼女の手料理を楽しみによくこの家を訪れる。福田さんはお酒が飲めないが、ワイン好きの友人のためにワインセラーを用意してストックを欠かさないと言い、そうした気遣いからも彼女がもてなしの心に満ちた人だとわかる。

 福田さんはこの家に住む前、約3年間パリで暮らしていた。「週末は店が休みになっちゃうから、午前中はマルシェや蚤の市に行って、そのあとは友達と集まってホームパーティをするのがお決まり。フランス人は自宅でもコースで料理を出すのが定番で、私もそれにならってコース仕立てで料理を出すようになりました。“次は何が出てくるんだろう”と楽しみがあるので喜ばれますね」。ゲストの好みや来る時間帯に合わせて料理を組み立てる。この日も「撮影が終わったあとは小腹が空くだろうから」とアップルクランブルを作ってふるまってくれた。

 温かな料理を前に「久しぶりにワクワクしたことがあったんです」と話してくれたのが〈BPQC〉のこと。「恵比寿三越のショップでたまたま見かけて、気になっていたんです。一枚ずつ手にとって見てみると縫製が丁寧で、着てみたらシルエットがきれいだった」。さらに驚いたのが価格。長くファッション業界に携わっていたからこそ、買いやすい価格でデザインや質に妥協せずに服を作るためにどれだけの努力が必要かわかるから。「パンツは麻のような質感なのにポリエステルでシワになりにくく、出張や旅行で活躍。スリットが入っていて動くたびに軽やかなのも気に入っています。ギャザースリーブのカットソーは表面に光沢があり、高級感がある。アイレット編みのニットベストと合わせれば女性らしい表情も楽しめます。ストライプのワンピースはジャケット風に着てもいいし、ボタンをしめてベルトでウエストマークしてドレスっぽくも着られる。どの服もシンプルなのに、合わせる小物によって色んなコーディネートができるのがいいですね」。

 福田さんは北海道で育ち、アートやグラフィックを学んだあと、アパレルの世界へ。人気ショップで店長を勤めたのち、独自のセンスを買われて、自身のブランドを立ち上げた。その後は外部のファッションブランドのディレクターに抜擢されるなど、次々に成功を収めてきた。そんな彼女に転機が訪れたのは、2011年の東日本大震災のとき。「ファッション業界は大打撃を受けていました。私もしばらく服に気持ちが向かなくて、何ができるんだろうと考えました」。そうしたとき、突き動かされるように東北へ炊き出しに行くように。困っている人を助けたい、本当に必要なものを提供したいという思いから、自然と始まった炊き出しだったが、自身の生き方についても考えるようになった。「ファッション業界にいると華やかな生活をイメージされがちですが、もともと器集めや料理を作ることが好きで、家にいる時間も長かった。だから、しばらくはファッションとは距離を置いて、もっと密接に生活にかかわることを仕事にしたいと思うようになったんです」その後、アロマを調合して作った香りのホームケアプロダクト「a day」を発表したり、ライフスタイルストアのディレクションを行うようになった。不安もあったが、「見栄を張らずに、“初めての挑戦です”と正直に伝えて、できることを精一杯やってきました」すると、思った以上の結果が出て、次の仕事につながっていったと振り返る。

 最近ではインテリアスタイリングやキャスティングの依頼も舞い込むなど、肩書きの枠を超え、活躍の場を広げている。そんな働き方を“人に寄り添うスタイル”と表現する福田さん。未経験の分野でもオファーをくれた人に対し、“自分がこうしたい”と全面に出すよりも、どのような結果を求めているかを丁寧にヒアリングし、理想に近づく方法を組み立てる。「私の働き方って料理に近い気がするんです。目の前にいる人がどれだけお腹が減っていて、どんなものを食べたいと思っているか。それを想像して、用意しておくことって仕事でも大切なことですよね」働き方が変わったことで考え方にも変化があった。以前は、自分のやりたいことができている状態こそ幸せだと思っていたが、今は困っている人に手を差し伸べ、ありがとうと言ってもらうことで自分も満たされていると気付いた。「自分本位ではなく、他人本位。人に感謝されることで、日々の中にたくさんの小さな幸せがあると気付いた。これからも私にできることがあれば真摯に向き合っていきたいです」

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