BPQC

04 JULY 2018

ものづくりの現場から

2012年の販売当初から、多くの人に愛される〈BPQC〉のモカシンシューズ。
歩きやすくて疲れにくい履き心地、カジュアルにもフォーマルにもなじむデザインで幅広い層に支持されている。
そんなモカシンが作られている神戸の靴工場に向かい、靴職人たちのこだわりとバイヤーの想いを聞いた。

PHOTO: AKIKO BABA TEXT: MARIKO URAMOTO
SPECIAL THANKS: TOKYO GARDEN

ハンドメイドから生まれる
快適で美しいモカシンシューズ

 “靴の町”として知られる神戸市長田区。ここに、〈BPQC〉のモカシンシューズを手がける会社、成和がある。1960年に創業した成和は従業員数約30人の小さな町工場。周辺にはたくさんの靴メーカーがあるが、それらと一線を画すのは“女性の足にやさしい靴”に根ざしたものづくりだ。見た目の美しさが優先された女性用シューズは長時間着用すると痛みや疲れを引き起こしやすい。成和はそれを課題として、ストレスの原因に向き合い、快適な靴が作れないかと挑戦を繰り返してきた。 そうして生まれたのは、土踏まずや踵をしっかりと包み込むインソールや柔らかな低反発クッションなどのオリジナルパーツ。〈BPQC〉のモカシンシューズの履き心地が軽やかなのは、そういった機能性パーツをさりげなく搭載しているからなのだ。

 モカシンシューズは専用の裁断機で牛革を一つずつ、型を抜くところからスタートする。天然素材の革だからこそ避けられないほんの少しキズもある。それらを見逃さず、かつ、無駄な部分がなるべく出ないように人の目でチェックし、裁断する。時間はかかるが全自動の機械ではできない作業だ。型抜きされた革は、縫製会社で端の処理をする。縫製した革が戻ってきたら、モカシンシューズの中で最も重要な工程の一つ、モカ縫いを行う。「モカシンのステッチを縫うのは簡単なように見えてたいへん難しい。あらかじめ開けられた穴に、糸を通していくのですが、微妙な絞りを出しながら、同じピッチ、同じテンションで縫い続けるのは、熟練の職人ではないとできない仕事なんですよ」と話すのは30年以上靴作りに従事する、職人の中澤偉さん。さらに言えば、一枚ずつ微妙に違う天然素材の革だからこそ、力の加減を変えて縫う必要がある。人間の繊細な感覚を必要とする作業だ。

 そうやってモカシンステッチを施したアッパーをオリジナルの木型にかぶせ、革の端を強い力で引っ張り、型に合わせて成形する。吊り込みといわれるこの作業も人の手で行う。甲の縫い付けに正確さを欠くと、ピタリとはまらない。だからこそ、手作業のモカ縫いが肝要なのだ。その後、高温の釜に入れて、革を靴の形になじませ、オリジナルのアウトソールを糊塗し、圧着。最後に型を抜き、不良がないかを人の目で隅々までチェックをして仕上げに入る。裁断から完成まで、ここで行う作業はほとんどが手作業。もちろん、熱を加えたり、プレッシャーをかけたりと機械の力を借りるところはあるが、細かな調整は人の手で行っている。機械に比べて、たくさんの人が関わるから、コストがかかるのも事実。

 それでも、ハンドメイドの靴にしか出せない魅力がある。「すべて機械で行えば費用は抑えられますが、できあがったシューズは足入れが柔らかすぎたり、踵の締まりが悪かったりとBPQCが求めるレベルに達しないことが多い。手間と時間はかかるけれども、ハンドメイドのシューズのほうが履きやすく、見た目の仕上がりも美しいんです」そう語るのは〈BPQC〉バイヤーの小木曽愛さんだ。 「BPQCのモカシンシューズで目指しているのは、コンフォートとファッションの両立。モカシンは一歩間違えると快適性だけが重視され、ファッションから遠ざかってしまう。それでは、三越伊勢丹にいらっしゃる感度の高いお客様には響かない。もともと発売当初から人気のシューズですが、ファッション性と履きやすさをさらに追求するため、少しずつ改良を重ねています」と続ける。

 たとえば、もともと深いグリーンだったというアウトソールは、服になじみやすいブラックに変更。また、フラットだったアウトソールは切れ込みが入ったタイプを採用することにした。切れ込みが入ることで、靴底に屈曲性とクッション性が生まれて歩きやすくなる。また、切れ込みタイプのソールは軽量化にもつながった。中底に入った2cmのインソールもこだわりの一つ。フラットシューズは歩行時の衝撃が足裏に伝わりやすいため、疲れを感じやすい。インソールを入れることで衝撃を吸収でき、自然とスタイルアップも叶う。そうしたものづくりの背景について小木曽さんは「快適な靴として成立しているだけではなく、さらに一歩進んだモカシンシューズにする。それが我々のこだわりです」と力を込める。数ミリ単位の調整を繰り返し行うことで、納得のできるシルエットとデザインのモカシンが生まれているのだ。

 長年に渡り、〈BPQC〉の人気を支えてきた看板商品。今年の夏、新しい試みとして行うのがオーダーイベントだ。ここでは、好きなカラーを組み合わせて自分らしい一足を作ることができる。「ボディとトップラインの色をそれぞれ選んでいただけるようにしました。カラーは全30色。モカ縫い用の糸も10色から選べます。トレンドの明るくて軽やかなカラーも多く用意しているので、ベーシックカラーのモカシンをお持ちのお客様も、流行に敏感なお客様も、それぞれの趣向に合わせて、お気に入りのシューズを作ってもらえたら」と小木曽さん。たくさんのファンがいるシューズだからこそ、より細やかなリクエストにも応えていきたい。その想いが今回のイベントにつながった。成和の中澤さんは「私たちにとっても初の試みなので、革の取り方など考えることはたくさんありますが、いただいたオーダーには我々の持てる能力を注ぐだけです」と意気込む。選ぶ楽しさが広がったモカシンシューズは、さらにファンを増やしそうだ。

成和

1960年 奈良県香芝市に〈成和ゴム工業〉として創業。
1980年 神戸市長田区へ工場を移転。
“女性の足に優しい靴”をコンセプトに中敷や靴底などを自社開発し、ストレスのないシューズを数多く生み出しつづけている。
掲載アイテム
モカシンシューズ

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